火曜日, 1月 10, 2017

地球上で最強な生き物「クマムシ」


 

クマムシが地球上で最強な生き物である理由



クマムシさん最強伝説、ここにあり。

その愛らしい容貌からニュースで話題になることも多いクマムシ。こんなに可愛い姿なのですが、実は地球上で最強生物とも言われています。極寒、放射線、真空の中でもサバイバルできるクマムシさん。完全に水分のないところでも生き延びることができるそうですが、科学者のみなさんがどうしてそんなに最強なのか解明してくれました。





ノースカロライナ大学の研究チームはTDPsと呼ばれるクマムシ固有のタンパク質に注目しました。このタンパク質はクマムシの体の一部をガラスのようなものに変化させ、乾燥からくる細胞の破壊を防ぎます。Molecular Cellジャーナルの中で、この仕組みは農業や医学にも役立つかもしれないと研究チームは語っています。

「極限環境微生物」に分類されるクマムシは200年にも渡って科学者たちを混乱させ、また同時に感動させてきました。ずっとずっとそのまた昔、古代から存在するこの可愛らしいクマムシはどんなひどい自然下に置かれても生きながらえることが可能な不思議な生物なのです。

普通、遺伝子というのは親から子へと受け継がれるもので、他者からの遺伝子を受け継ぐことはできないのですが(遺伝子水平伝播と呼ばれています)、最近の日本の研究でクマムシの遺伝子は異種生命体の遺伝子から成り立っているということがわかったのです。
クマムシは1,000以上の種が存在していて、普段は湿った苔の上を這っていたり、海の中を泳いでいたりします。いろんなところへ移動するため、生き延びるための術を身につけていったと考えられています。先に述べた通り、極寒の地でも、放射線の中でも、水分のない場所でも生きることができるのです。

クマムシが自身を乾燥させる際、自分の表皮の中に足と頭を引っ込めてボールのような形になります。こうして冬眠、いや乾眠をするのですが、なんと10年以上この状態を保つことができるそうです。水があればまた眠りから起きます。

イースト菌や塩水エビ、無体節ぜん虫などはトレハロースと呼ばれる糖分を使って乾燥をしのぎます。科学者たちは長い間、クマムシも同じ方法で乾燥から身を守っているものだと考えてきましたが、調査の結果クマムシの体内にはトレハロースがほとんど検出されませんでした。ということは、何らか他の方法を使っているのだと考えたノースカロライナ大学の研究チームは、その方法を見つけようと乗り出したわけです。







まず研究チームは実験のプランを立てました。クマムシを寒さ、乾燥などのいろいろなストレスレベルにさらします。クマムシ固有のタンパク質TDPsがクマムシが自身を乾燥させていく過程で出てくるのか観察しようというプランです。一般的なタンパク質と違ってTDPsは三次元構造を持っていないためガラスのような表面になります。この特殊なタンパク質TDPsの働きをチェックするために、研究チームはこの遺伝子を他の生物に注入してみました。

「TDPsはクマムシが自分たちを乾燥から守るために必要なタンパク質です。しかしこのTDPsをバクテリアやイースト菌に入れたところ、それらの乾燥への耐久が増加しまし」と話すのは研究チームのリーダーThomas Boothbyさん。「驚くべきことですが、TDPsは試験管の中の乾燥に敏感な酵素のような物質でさえも保護することができるとわかりました。ガラスのような固形物が乾燥に敏感な分子をコーティングして、壊れるのを防いでいるからなのです」とBoothbyさんは話します。

Boothbyさんは、トレハロースを使わないクマムシが乾燥に対して同じような解決法を利用していることがいちばん興味深いことだと話しています。「トレハロースは細胞や構成分子を守るためにガラスのような形状になると考えられています。クマムシのタンパク質も同じような働きをしていますし、ガラスのような形状になるところも同じです。これは収束進化のいい例で、自然界は同じような方法で自分たちを守ろうと進化しているのです。ただ糖分とタンパク質という2つのまったく違ったものを使ってですが」とのことです。

今回の研究の著者たちは、このタンパク質はいろんなことに応用できるのではないかと話しています。例えば穀物を干ばつから守ったり、乾燥する地域で医療品を冷蔵しなくていいようにしたり。そして1番理想的なのは、これを人間へ応用することです。2016年、研究チームはこのクマムシのタンパク質を人間の培養細胞に組み込むことができることを発見。まだまだ長い研究が必要だとは思いますが、もしクマムシを守っているようにこのタンパク質が人間を極度の乾燥や寒さ、また放射線から守ってくれるのなら…と考えると未来が広がりますね。







source: Molecular Cell
George Dvorsky - Gizmodo US[原文



30年の冷凍からの目覚め、復活したクマムシの勇姿を見よ






生命の無限の可能性を感じます。
難病治療のために自分の体を冷凍保存する人は稀にいますが、将来無事に起きられる保証はありません。しかしもっと単純な生物、たとえばクマムシだったら、30年の冷凍状態からの復活も可能なんです。
この研究を行なったのは、日本の国立極地研究所。南極でコケ試料と一緒に採取したクマムシを1983年に凍結し、2014年に解凍作業が行なわれました。







解凍した卵は6日後に歩行するようなしぐさを見せ、13日後には藻を食べはじめます。さらに22日後には体内に卵が観察され、29日後にはほぼ完全な状態までの復活を遂げています。また別の蘇生した1つのクマムシは死亡し、1つの卵は無事に孵化、成長しました。
クマムシは高温、ほぼ絶対零度、乾燥、圧力、放射線などの極限環境に耐えられる「最強生物」として有名ですが、そのほかにも「クリプトピオシス」という特性で知られています。これは乾燥などで生存環境が厳しくなると代謝を停止し、水分が与えられるまで休眠するというもの。クマムシは以前も9年間乾眠していた記録があるのですが、今回は大幅な記録更新となりました。
今後、研究所では長期保存によるDNAの損傷や、修復機構を調べるとしています。私たちにはクマムシは遠い存在にも感じられますが、そのうちこの研究が医療に応用される日がくるかもしれませんね。








source: 国立極地研究所BGR