日曜日, 7月 17, 2016

テレビと音楽

 

 

とんねるず、ダウンタウン、そして秋元康が歌謡曲を終わらせた—テレビと音楽



今回は7月18日放送の「FNSうたの夏まつり」とのコラボを記念して、「テレビと音楽」というテーマで特別版をお届け! 歌謡曲とJ-Popの境目がわかると、テレビと音楽がとてもおもしろいそうですが、そのキーマンは、とんねるず、ダウンタウン、そして秋元康さんでした。
7月18日(月)11時30分頃よりYouTubeライブにて、11時間裏実況しますのでそちらも併せてお楽しみください! 豪華ゲストも目白押しです。





柴那典(以下、柴) なんと、今回「心のベストテン」が、フジテレビの「FNSうたの夏まつり~海の日スペシャル~」とコラボすることになりました!

大谷ノブ彦(以下、大谷) いやあ、すごいことになりましたねえ! しかし、107組、171曲ってすごくないですか?

 7月18日の11時45分から、11時間ぶっ続けの生放送ですからね。

大谷 僕ら二人はその間、何するんでしたっけ?

 会場そばの特設ルームからYoutubeLIVEによる生配信で、裏実況というか、番組のこともそれ以外のことも、音楽についていつも通りしゃべり続けます。

大谷 ただそれが11時間ある(笑)!

FNSうたの夏まつり 裏実況SP

 大谷さんはこういうの慣れてるかもしれないですけど、正直僕、不安です。

大谷 なんとかなりますよ! だって音楽聴いて好きなこと話してるだけでしょ?

 まあ、そうか。そうですね(笑)。

大谷 いやあ、しかし出演陣も豪華だし楽しみだなあ。

 ゲストにアイドルやミュージシャンの方が来てくれたりもするみたいです。

大谷 ℃-ute来てくれないかな〜。

 あははは。とにかく僕らは視聴者と同じ目線で、音楽好きとして、番組を楽しみましょう。

大谷 それね、大事。

 

とんねるずとダウンタウンが歌謡曲の時代を終わらせた


 というわけで、今回は音楽番組の話をしたいなと思うんです。

大谷 お! 歌番組の話、いいですねえ。

 そしたら今回の「FNSうたの夏まつり」がなんでこんなに長いのかも、僕らなりの結論にたどり着けると思うんです。まずはテレビと音楽がどう蜜月を築いてきたかについてなんですけど—。

大谷 おもしろそう! 歌謡曲の話から始めちゃいますか?

 そう。日本の大衆音楽って「歌謡曲」から「J-POP」に変わっていったんですけど、その境目がどこなのかがわかるとおもしろいんですよ。

大谷 ああ、それはそうでしょうね。

 よく言われているのが、89年にスタートしたFMラジオ局のJ-WAVEで「J-POP」という言葉が最初に使われたという説ですね。そこから93年くらいにかけて徐々に広まっていった。
 だから歌謡曲とJ-POPの境目は昭和と平成の切り替わりのタイミングである1989年あたりなんです。

大谷 なるほどね。僕の考えではね、とんねるずの「情けねえ」(1991)が歌謡曲の時代を終わらせたきっかけだと思ってるんです。

 ほう。というと?

大谷 この曲って、秋元康さんが歌詞を書いてるんですけど、長渕剛さんのパロディなんですよ。「ちっぽけなしあわせに魂を売り飛ばし」「ツバ吐いて 捨てた夢」とか、いかにも長渕剛が言いそうな言葉だけで作られている。極めつけは、「この世のすべてはパロディなのか」なんて言葉が入っている。
 これが当時の「日本歌謡大賞」の大賞をとってしまった。

 あー、そうだ! これが91年のことですね。いま動画を検索すると、明らかに長渕さんっぽい歌い方をしている(笑)。







大谷 パロディで作ったものが王道の評価をされちゃったんです。今はもう、DJでこの曲かけても、みんな普通に「いい曲」として大合唱になりますからね。

 今や誰もパロディだと思ってないわけだ。

大谷 「情けねえ」が大ヒットしたのは、間違いなくカラオケブームのおかげだと思うんです。みんなカラオケでこの曲を歌ってた。で、売れたもんだから、歌謡曲の権威の側がそういうパロディの曲に賞をあげちゃった。そうしたら、翌々年の93年に「日本歌謡大賞」自体も終わってしまうんです。これって、つまりは歌謡曲の役割が終わっちゃった、ってことなんですよね。

 

テレビバラエティはお笑いと音楽が常に共存してきた


 なるほど。まさに僕も大谷さんと重なることを言おうと思っていたんです。というのは、歌謡曲って基本的にテレビの中で生まれたものだと思っていて。
 で、テレビバラエティの歴史を振り返ると、いろんな時代で、常にお笑いと音楽が共存していたんですよね。

大谷 まさに。『シャボン玉ホリデー』(1961-1972)と植木等の時代からそうだった。

 しかも、「お笑い」と「音楽」はテレビの中で常にどっちがエラいかの綱引きをしてきたと思うんです。

大谷 あー、なるほど。それはおもしろい!

 70年代から80年代はザ・ドリフターズの『8時だョ!全員集合』の全盛期でした。
 あの番組って、いかりや長介さんが「ダメだこりゃ」って言ってコントが終わったら、その舞台を全部撤収した後にゲストの歌手が出てきて歌うんです。つまり、歌手のほうがエラかった。

大谷 ああ、なるほどね。歌がメインで、コントが前座なんだ。

 歌謡曲の時代って、音楽のほうがお笑いよりエラかった時代なんです。 『オレたちひょうきん族』もそうですよね。『ザ・ベストテン』に権威があったから、そのパロディの「ひょうきんベストテン」が成立していた。でも、それが89年に全部終わった。

大谷 そうか……ってことは、90年代のJ-POPはお笑いのほうが音楽よりエラくなった時代、ってこと?

 そう! だから91年の「情けねえ」がターニングポイントになった。あの時点で、お笑いコンビであるとんねるずが、パロディで本物の歌謡曲に勝っちゃった。

大谷 だからその後にダウンタウンさんが出てきて『HEY! HEY! HEY!』(1994−2012)が始まるんだ。

 そうなんですよ。『HEY! HEY! HEY!』はミュージシャンが松本さんにイジられたり浜田さんに頭叩かれたりして番組が成立してた。お笑いのほうがエラいんです。

大谷 すごい話だなあ! でも、それって本当にいいことだったのかな(笑)。

 いいことかどうかはわからないですけどね。でも、少なくともテレビの歌番組がそういう歴史を作ってきたのは間違いない。

大谷 その頃浜田さんがH Jungle with tで歌った「WOW WAR TONIGHT 〜時には起こせよムーヴメント」なんて、200万枚以上の大ヒットですからね。





 世界で一番売れたジャングルの曲になったという。
※UKで90年代に勃興したクラブ・ミュージックのジャンル

大谷 でも、そういうアンダーグラウンドなジャンルの曲をお笑い芸人がやるのって、その前からあったと思うんです。YMOとスネークマンショーだってそうだった。でも浜田さんの「WOW WAR TONIGHT」が決定的に違うのは歌詞ですよね。

 あー、確かに。

大谷 コミックソングじゃないし、とんねるずのようなパロディでもない。そのへんのうまくいってない男の子の日常の歌ですからね。


たまにはこうして肩を並べて飲んで
ほんの少しだけ立ち止まってみたいよ
純情を絵に描いた様なさんざんむなしい夜も
笑って話せる今夜はいいね…
温泉でも行こうなんて 
いつも話してる 

H Jungle with t「WOW WAR TONIGHT 〜時には起こせよムーヴメント」より

 
 そうか、それをカラオケで普通の男の子とか女の子が歌ってヒットした。その後、ウッチャンナンチャンのポケットビスケッツとブラックビスケッツの大ヒットもあった。

大谷 ブラビの「タイミング」(1996)とかね〜! 90年代のJ-POPはお笑い芸人が日常を歌う時代に入ったと。

 『うたばん』も90年代ですもんね。あれも石橋貴明さんと中居正広さんが司会で、お笑いのほうが音楽よりエラい番組。やっぱり歌謡曲の時代を終わらせてJ-POPの時代を作ったのはとんねるずとダウンタウンだった。

 

秋元康というカイブツ


大谷 もっと言うと、これって全部秋元康さんが仕掛けてるんですよ。歌謡曲の時代を終わらせたのも、80年代アイドルの全盛期を終わらせたのも秋元さんだった。

 『夕やけニャンニャン』(1985)で普通の女の子を集めて、そこからおニャン子クラブをデビューさせたわけですもんね。

大谷 それと小泉今日子の『なんてったってアイドル』(1986)もですね。あれをヒットさせたことで、それまでにあったアイドル幻想みたいなものを全部ぶち壊した。そのせいで、90年代はアイドル暗黒期に入るんです。

 そしてさっき語ったとんねるずの「情けねえ」のプロデュースと作詞も秋元康さんだった。

大谷 つまり80年代の秋元康さんは歌謡曲とかアイドルの美学をパロディ化することで時代を作ったんです。でも、そのことによって前の時代が急激に古くなってしまった。

 90年代、ビーイング系の時代とか小室系の時代は、秋元康さんはちょっと影を潜めてましたね。

大谷 でも、あの人は本当にすごいんですよ。だって、松本隆さんだって阿久悠さんだって、全盛期は10年もないんです。時代が変わったら世界観が古びてしまう。でも秋元康さんは何度も戻ってきてる。AKB48でもう一度アイドルの時代を作ったわけですからね。

 wikipediaを見ると、チャート1位をとった作詞曲が、1985年から2016年まで現時点で136曲もある。ほんとにカイブツですよね。しかもAKB48では、80年代とは歌詞の書き方がまったく変わっている。

大谷 やっぱり顕著なのは「RIVER」からですね。直球で啓蒙的な歌詞を書いている。それがアイドルファンにダイレクトに刺さった。






君の目の前に 川が流れる
広く 大きな川だ
暗く深くても 流れ速くても
怯えなくていい
そうだ 向こう岸はある
もっと 自分を信じろよ 

AKB48「RIVER」より

 
 秋元さんは以前インタビューで「女の子たちの観察日記として歌詞を書いている」と言ってたんです。つまり、2005年に劇場を開いてから数年間、そこから10代の女の子たちがどう悩んで、どう這い上がって、どう才能を発揮するかを見て、それをそのまま歌詞に書いた。

大谷 おニャン子クラブとは真逆ですよね。あの時代はオッサン目線で見た理想の女の子を歌詞に書いてたわけだから。


友達より早く エッチをしたいけど
キスから先に進めない 臆病すぎるの
週刊誌みたいな エッチをしたいけど 

おニャン子クラブ「セーラー服を脱がさないで」より

 
大谷 なんで秋元康さんは女の子に寄り添う書き方になったんでしょうね。

 それはもう時代が違うからですよね。特にメディアのリアリティのあり方が変わった。80年代はテレビがメディアの王様で、その楽屋裏を見せるのが当時のリアルだったわけじゃないですか。でも2010年代のリアルがどこにあるかって言ったら、現場とSNSですよ。

大谷 なるほどね! だから劇場と握手会なんだ。

 現場でオタクが発信すること、女の子がSNSで書くことが何よりリアルなんです。そんな時代にテレビの裏側を見せたってリアルじゃない。秋元康さんはそのことを誰よりも先にわかってた。だからAKB48が天下をとったんです。


 

 

“お笑い”と“音楽”の綱引きでテレビの歴史はつくられる—テレビと音楽



乃木坂46とミスチル桜井和寿


 前回は歌謡曲とJ-POPの境目の話から、90年代のテレビバラエティはお笑いのほうが音楽よりエラかったという話でしたけれど—。

大谷 そして、カイブツ秋元康ね。そういえば柴さん、乃木坂46のアルバム聴きました? あれがほんとに素晴らしい。

 『それぞれの椅子』、いいアルバムですよね。

大谷 あそこに入ってる「きっかけ」って曲がめっちゃいいんですよ。





大谷 特に歌詞が素晴らしい。自分のアイデンティティがぐらついてる子が、その気持ちを信号機に喩えるんです。「心に信号があればいい」って。ルール通りに生きられたら楽だけど、誰かの指示を待つんじゃなくて、自分の衝動に従って生きていきたい、って。聴いてて胸が切なくなる。


決心のきっかけは 理屈ではなくて
いつだってこの胸の衝動から始まる
流されてしまうこと 抵抗しながら
生きるとは選択肢
たった一つを 選ぶこと

乃木坂46「きっかけ」より

 
大谷 そしたら、実はこないだMr.Childrenの桜井和寿さんからメールが来たんです。「乃木坂46の『きっかけ』って超良い曲じゃない? どう、大谷くん」って。

 ええ!? そんなメールが来るんだ! すごい。

大谷 こないだ武道館でやった「Golden Circle」ってイベントでも、桜井和寿が寺岡呼人さんとこの曲をカバーしてたんですよ。しかもそれが作曲した杉山勝彦さんに届いて。「音楽の道に踏み込むきっかけとなったアーティストに届いてうれしすぎる!」ってツイッターに書いてた。

 いい話だなあ!

大谷 秋元康さん、どれだけ名曲書き続けるんだって、つくづく思いましたよ。

 そこにちゃんとアンテナ張ってる桜井和寿さんも素晴らしいですね。

 

SMAPと野猿、そしてJ-POP名曲化の時代

大谷 あとテレビと音楽のシーンでデカいのがSMAPですよ。SMAPがお笑いと音楽を融合して、アイドルのあり方を変えてしまった。

 SMAPの存在はほんとに大きいですよね! 『SMAP×SMAP』が96年スタート。アイドルがコントをするなんてそれまでの常識にはなかったわけだから。

大谷 あともう一つ、忘れちゃいけないのが「野猿」なんです。あれも90年代だった。今も90年代テーマのDJイベントで野猿の曲をかけると超盛り上がるんです。

 ありましたねえ。『とんねるずのみなさんのおかげでした』の番組スタッフがデビューして、大ヒットした。

大谷 野猿って、意外に大事なグループだったと思うんです。

 そうなんですか?

大谷 あれも、90年代に秋元康さんが仕掛けたことだったんですよね。80年代のノリ、テレビの楽屋裏を見せてスターを作るのをもう一度やった。

 でも野猿は98年にデビューしてから3年後の2001年に解散してます。

大谷 「撤収」って言ってましたよね。長くは続けられなかった。

 実はそれも歴史的な流れから見ると必然だったと思うんです。
 というのも、00年代初頭はそれまでの反動で、音楽のほうがお笑いよりエラくなろうとする動きが起こっていたから。

大谷 わかるなあ、それ。だってフェスも始まって、格好いいロックバンドもたくさん出てきて、宇多田ヒカルが出てきた。本物がウケる時代になった、ってことですよね。

 それに、00年代前半のJ-POPって、いわゆる名曲が多いんです。SMAPの「世界に一つだけの花」もそうだし、サザンオールスターズの「TSUNAMI」もそうだし、一青窈の「ハナミズキ」もそう。

大谷 マジメな歌が多いですね。

 そう! みんな茶化さない。教科書に載るようなタイプの歌詞なんですよ。MONGOL800の「小さな恋のうた」もそう。

大谷  青春パンクも全部そうだ。

 これって、いわゆる野猿的なものへの揺り戻しだと思うんです。

大谷 なるほどね! パロディが通用しなくなって、音楽のほうがお笑いよりエラくなってきたんだ。

 それに、BUMP OF CHICKENとかアジカンとか、00年代にデビューしたバンドはみんなテレビに出たがらなかった。それって明らかに『HEY! HEY! HEY!』とか『うたばん』に出てイジられるのが格好悪いと思ったからですよね。

大谷 わかるなあ。そこから音楽番組が衰退していったわけなんですね。お笑いありきの作り方しかできなかったから。

 そう。だから『Mステ』しか残らなかった。

大谷 なるほどねえ。それが00年代だった。じゃあ、これからの音楽番組ってどうしたらいいんでしょうね。

 

フェス化する音楽番組


 これね、僕はまず強く言いたいんですけど、みんな00年代を一緒くたにまとめて語りすぎなんですよ。00年代って、実は前半と後半で全然違う。

大谷 ほう。どう違うんですか?

 00年代の前半は、さっき言ったように「名曲の時代」だったと思うんです。歌い継がれるような曲が次々と生まれる時代だった。
 でも、00年代の後半、2006年から2010年くらいまでが、正直テレビとJ-POPにとって一番ダメな時代だった。

大谷 というと?

 理由はハッキリしてます。YouTubeとニコニコ動画が出てきた。夏フェスがレジャーになって、ライブの現場の方に盛り上がりが生まれた。相対的にテレビが力を失っていったんです。

大谷 確かに、テレビによってヒットソングが生まれなくなった。でも、今はおもしろい音楽が増えてる感じがしません?

 そうなんですよ。暗いムードがあったのは00年代後半まで、2011年からはまた時代が変わってきている。

大谷 こんなタイプの音楽もあるの?って感じで、とにかく音楽シーンがどんどん豊かになっている気がします。

 だから、音楽番組もここ数年でずいぶん変わったんですよね。

大谷 そうか! それを全部網羅しないといけないから『FNSうたの夏まつり』もどんどん放送時間が長くなっている。

 そうなんです! 長いんですよ! 『FNSうたの夏まつり』も『THE MUSIC DAY』も『音楽の日』も『ミュージックステーション ウルトラフェス』も、2010年代に入って始まった大型音楽番組って、全部10時間超えの生放送になっている。これって何かって言うと、音楽番組のフェス化なんですね。

大谷 なるほどね。「うたの夏まつり」って「夏フェス」のことなんだ。

 だって、ニュースサイトを見ても「FNSうたの夏まつり、今年の第一弾アーティスト発表!」って見出しになってるじゃないですか。これもフェスと一緒。

大谷 ははははは! あと、SNSもありますよね。ああいう番組って、みんな観ながらツイッターで呟いてる。あの参加の仕方もフェスっぽい。

 そうなんです。実は00年代後半のテレビとJ-POPはずっとネットを敵にしていたんだけど、今の音楽番組はスマホ片手に観るものになっている。SNSを味方にしてるんですよね。

大谷 もうこれ、『SNSうたの夏まつり』に変えちゃったほうがいいんじゃないですか!?

 ははははは! フジテレビじゃなくなっちゃう。

 

なぜ夏の名曲が多いのか


大谷 今回の『FNSうたの夏まつり』って、「最強の夏うた100選」って企画があるじゃないですか。

 歌謡曲からJ-POPの時代まで夏のヒット曲を集めたコーナーですよね。

大谷 それで言うと、80年代の松田聖子って、シングルが全部季節の歌だったって知ってます?

 そうなんだ!

大谷 そうなんですよ。しかも夏の歌が多い。「青い珊瑚礁」も「夏の扉」も「白いパラソル」も「小麦色のマーメイド」も、全部夏の歌。シングルだと冬の曲がほとんどない。冬の歌がいまいちハマらなかったんですよね。

 なんで夏の曲ばっかりなんでしょうね。

大谷 やっぱり「祭り感」が大事だと思うんですよ、ポップスって。

 たしかに、冬にはそういう感じはないですもんね。

大谷 僕ね、Mr.Childrenの「エソラ」という曲がすごく好きで。あの曲の歌詞の何がすごいって、「忘れないために 記憶から消すために」ってフレーズがあるんですよ。





やがて音楽は鳴りやむと分かっていて
それでも僕らは今日を踊り続けてる
忘れない為に
記憶から消す為に Oh Rock me baby tonight
また新しいステップを踏むんだ
Mr.Children「エソラ」より

 
大谷 たとえば僕らが初めて恋人とキスを交わした時に流れてた曲って、その光景と一緒に覚えるじゃないですか。で、その一方でつらいことがあった時には音楽を聴いてそれを忘れたりもする。そういう音楽の日常への寄り添い方をたったワンフレーズで言い表しちゃってるんです。

 なるほど。さすが桜井和寿ですね。

大谷 つまり、ポップスって、その人の思い出に寄り添うわけですよ。そう考えると、夏は人生においてのロマンチックなシーンが多すぎる。

 たしかに。

大谷 だから音楽が必要なのよ! ザ・クロマニヨンズのマーシーが「夏こそロックンロールの季節」っていうのもそういうことですよ。夏は服も薄くなるし、女性もエロくなるし、どんどん開放的になってくる。

 なるほどねえ。だからポップスには夏の曲が多いんだ。

大谷 そう。夏は何かが起きる季節なんです。
















7月18日(月)11時30分頃より「心のベストテン」が「FNSうたの夏まつり」を11時間裏実況!



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