火曜日, 1月 26, 2016

ペンタゴン式 「折れない心」をつくる方法

ペンタゴン職員が実践している 「折れない心」をつくる方法

 

 

 

ペンタゴン式 ハードワークでも折れない心のつくり方 (カイゾン・コーテ著、中津川茜訳、 KADOKAWA) のタイトルにあるペンタゴンとは、いうまでもなくアメリカ国防総省の通称。傘下に群を携えた、アメリカの軍事、国防の拠点として知られる官庁です。そこで繰り広げられている厳しいミッションの数々は機密のベールに隠され、映画さながらの世界も実際に存在するのだとか。
そんなペンタゴンの国防情報部隊におけるエキスパートとして活躍する著者によれば、現場では判断を一歩間違えば多くの命を巻き込む危険な任務も多々あるため、「絶対」に、「いかなる失敗」も「間違い」も許されないのだといいます。

そう聞くと、私たちの日常からは想像もつかないような、特別なスキルを備えていないと務まらない世界であるように思えます。しかし軍隊での経験と私たちの仕事や人生は、実はとても似ているとも著者はいうのです。なぜならハードな仕事や人間関係、子育て、受験のストレスなどで、体だけでなく心を壊してしまう人は後を絶たないから。そこで、そんなときに有効なツールとして、本書が書かれたのだということ。

まず、次の5つのステップに沿って実践することによって、心のあり方は確実に変化していくはずだと著者は断言しています。



【ペンタゴン式「折れない心」をつくる5つのステップ】

1. 折れない心のメカニズムを知る
2. 逆境や困難に強くなる心のキャパシティを増やす
3. 逆境や困難を受け入れ、いかなる場面にも準備可能な自分をつくる
4. 目の前の逆境や困難に対処するためのスキルを磨く
5. 起こってしまった辛い出来事から回復するための力を培う
(「はじめに なぜ極限状況でも心が折れないのか」より)

ペンタゴンの古い格言に「日常汗をできるだけかけ、そうすれば戦時に血は流れない」という言葉があるそうですが、「折れない心」の秘密も、日常のシンプルな習慣にあるのだということ。
第2章「『折れない心』を整えるペンタゴンの常識」から、いくつかを引き出してみましょう。




 

1.どんなときも「息」を止めない


人間にとっては「当たり前すぎる基本」であるだけに、呼吸の重要性を意識することは決して多くないでしょう。しかし、ペンタゴンにおいて呼吸は非常に重要で、ミッションを支えるすべてでもあるのだそうです。それもそのはず。呼吸は使い方次第で、人生の可能性を大きく広げる最強のツールにもなるからです。

だからこそ、基本的な理想の呼吸(基本呼吸)を習慣化すべきです。そしてストレスを多く抱える人は呼吸が浅くなるものなので、まずは1分間時間をとり、その間に自分が何回呼吸をしているか数えてみてほしいと提案しています。このとき呼吸は意識しすぎず、普段どおりにすることが大切。

理想的な呼吸は、鼻から吸って口からゆっくりと吐く方法が基本で、1分間に8回から10回だそうです。この回数で呼吸を行うと、肺容量を十分に使った、質のよい呼吸が可能になるといいます。そして質のよい呼吸を行うと、副交感神経が働いて精神が安定します。つまり普段から理想的な呼吸を行うことは、心のキャパシティ確保の基本にもなるということ。

加えてペンタゴンには、「タクティカル・ブリージング」と呼ばれる呼吸法が存在するそうです。狙った敵だけを倒すという、高度なミッションを抱えたスナイパーたちが戦術のひとつとして行う呼吸。この呼吸を行うと、心拍数が調整され、緊張と弛緩の間の、理想的な状態に心を置くことができるというのです。

やり方は簡単で、姿勢をしっかり正してリラックスしたら、鼻からゆっくり4カウント息を吸い、その後4カウント息を止めます。その後4カウントかけ て口から息を吐き、履いたら4カウント息を止めます。ここまでをワンクールとし、4、5回繰り返すだけ。「ここぞ」という場面で心を奮い立たせる場合、この呼吸が強い味方になると著者はいいます。(60ページより)





2.心の静寂を習慣にする


心のキャパシティを増やす基本トレーニングとして、呼吸とともにペンタゴンが積極的に取り入れているのが「瞑想」。心の静寂を手にし、常に冷静でクリアな思考を保つため、瞑想は重要な基礎トレーニングのひとつとなっているのだそうです。

もともとは兵士たちのPTSD対策のひとつとして導入されたもの。しかし、やがて「疲れにくくなった」「ストレスが軽減された」など、想像していた 以上の効果を実感することになったのだとか。そこで、いまでは陸・海・空および海兵隊と、すべての舞台で取り入れられているといいます。

ペンタゴンが取り入れているのは、「マインドフルネス瞑想」。これは瞑想の難しさを排除し、誰でも簡単に脳と思考を休ませることができる手段。座禅を組んだり正座をする必要もなく、次のステップを踏むだけでいいそうです。


 【ペンタゴン式マインドフルネス瞑想の3つのステップ】

1. 基本呼吸を行い、姿勢を正しリラックスする
2. 肩の力を抜き、ゆっくりと目を閉じ、いま、この瞬間に起こっている周囲の状況にフォーカスする。雨音、風の音、自分の呼吸のリズム、なんでもいい
3. その間もゆっくりと呼吸を続ける
(67ページより)

重要なのは「いま、ここ」という瞬間に集中することで、初心者が瞑想を行う場合は、自分の呼吸にフォーカスするのがいちばん簡単。また、いきなり長時間行うのではなく、最初は3分程度から挑戦し、無理のないように時間を伸ばすようにするといいそうです。ちなみにペンタゴンの現場での平均瞑想時間は12分。
瞑想により強制的に脳に休息を与えると、心に余裕が生まれてくるもの。その結果として冷静さが増したり、判断力が高まったりするのだと著者はいいます。(64ページより)






基本を何度でも繰り返す


呼吸も瞑想も日常に生かすことが重要ですが、忙しい日々においては、自らを律しない限り習慣化することは難しいかもしれません。しかし、だからあえて自らを鍛えなさいと著者は訴えています。本当に心のキャパシティを増やしたいなら、本書に目を通すだけでは不十分。そのための時間をつくり、知り得た知識を完全習得するための「トレーニングの習慣」を日常に加えるべきだということ。

そこで著者が勧めているのは、基本呼吸と瞑想の徹底化を、日々のスケジュールのなかに加えること。心を強く構築する基礎づくり、そして心のキャパシティを増やすのに必要なトレーニングとして、このふたつは最重要視すべきだというのです。

さらに、ちょっとハードルが高いと思うようなことにもあえて挑戦し、それを習慣化してみるといいのだとか。1週間に1冊必ず本を読む、あるいは毎晩軽い運動を行うなど、なんでもOK。「これをすることによって、自分は一歩前に進んでいる」という感覚を得られるような、小さな挑戦を続けることが、心の状態を強くしなやかにするために効果的だという考え方です。(68ページより)






 

ネガティブな思い込みは「もし◯◯だったら」と置き換える


心のキャパシティを広げるためには、ネガティブな「思い込み」をしないことが大切。
思い込みは、「◯◯に違いない」「きっと◯◯だ」「噂では◯◯らしい」というような、論拠や根拠に欠ける主観で物事をジャッジしてしまうときに生じるもの。
それは物事の本質を見極める前に自身の考えを固定化させる行為で、真実を見つめる機会を奪ってしまいます。

また思い込みは、やがて「自己暗示」に姿を変える場合が多いもの。「◯◯に違いない」と思い込んでいたことが、いつしか自分の中で真実になってしまったりするということです。
そのような悪循環を防ぐには、単純に「思い込み」をやめるのがいちばん。

そのための解決策として有効なのが、思い込みを「仮説」に置き換えるというテクニック。
「◯◯に違いない」というような発想が頭に浮かんだら、「もし◯◯だったら」という仮説に置き換えて物事を考えるようにするのです。
たとえば「彼女は私が嫌いなのだ」と思い込んだなら、それを「仮に彼女が私を嫌いなら、私はどうしたいか」というように置き換えをするわけです。

不確かな要素を前提として、心の行方を1つに「限定するような行為は、自らの心の余裕を狭めるもの。しかしそれを仮説に置き換えれば、心には多くの余裕が生まれるはずだといいます。(72ページより)







 

 自己暗示を利用する


「思い込み」がつくってしまうネガティブな暗示がある一方、プラスに作用する「暗示」も存在するといいます。良質な「自己暗示」は、ポジティブに自分の心をコントロールし、心のキャパシティを増やすことに役立つということ。そしてその暗示によって、やる気や本気、根気を生むことも可能なのだというわけです。

たとえばペンタゴンで使われる自己暗示のひとつに、兵士たちがトレーニングを行う際に活用する「ミリタリー・ケイデンス」というものがあるそうです。走ったり、腕立て伏せをしたりしながら、ある一定のリズムでフレーズを口に出して唱和するというもの。その行為自体が有効な自己暗示になっているのです。

規則正しいリズムで自らを奮い立たせるケイデンスは、士気を高めるツールになるといいます。また、ケイデンスを取り入れることにより、隊員同士のチームワークの向上、規律の向上という効果もあるとか。もちろんケイデンスはミリタリーならではの自己暗示法ですが、私たちが自分を自己暗示にかけることも可能。
たとえば自分の心を高揚させ、さらに高みを目指すため、自分がなにか行動を起こす際の「テーマソング」を決めるのも有効だと著者はいいます。

音から得られる心理高揚の効果を活用し、苦手な人と会うときや、大事なプレゼンテーションを行う前など、緊張しそうなときに使うということ。とはいえ実際に声に出して歌う必要はなく、心のなかでそれらの音楽をイメージするだけで十分。

自己暗示を効果的に使うことは、心のキャパシティを、実際のそれより2倍にも3倍にも大きくするといいます。そこで著者は、上手に自分の心に働きかけ、日々の活力を増やしていくことを勧めています。(92ページより)







自分の人生を変えることができるのは、ほかならぬ自分自身。そして、自分を変えることができるのは「心」のありかた。そのような考えはたしかに、ペンタゴンだけではなく、私たちの日常にもあてはまるのではないでしょうか?



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