木曜日, 9月 10, 2015

テラヘルツ帯小型受信機|富士通

テラヘルツ帯小型受信機。富士通が開発、2020年の実用化を目指す

数十Gbpsという通信速度が実現可能という300GHz帯の小型受信機を、富士通が開発中であることを発表しました。実用化すれば、たとえばスマートフォンどうしで 4K、8Kといった高精細映像を瞬時に転送することも可能となります。
 
  100GHzから10THzまでの周波数帯はテラヘルツ帯とも呼ばれ、信号を運ぶための搬送波の数は現在の携帯電話が使っている800MHz~2GHzに 比べるとおよそ100倍前後にのぼります。テラヘルツ帯では数十Gbpsという高速な通信速度が見込める反面、電波の減衰もしやすくなります。このため、 受信側には高感度な増幅器が必要となります。

これまでのテラヘルツ帯受信機は、アンテナで受信した電波を"導波管"と呼ばれる特殊な部品経由で増幅器へ接続しており、これが小型化への障壁となってい ました。富士通が開発したテラヘルツ帯受信機は、別々に構成されていたアンテナと増幅器を一体化し、携帯端末に組み込めるほどの小型化を実現しています。
開発した受信機は小型化に伴い、内部プリント基板の素材にも工夫を加えています。一般的に用いられるセラミックや石英の基板はテラヘルツ帯信号を減衰させ てしまうため、富士通はここにポリイミド素材を使いました。ポリイミドは石英よりも損失が高いとされますが、加工精度を非常に高くできるという特徴を持っ ています。高周波信号を扱うプリント基板では、電波の波長の1/10以下の間隔で表裏を貫通するグランド配線が必要であり、結果的に石英基板にくらべ約 50%もの損失低減効果が得られたとしています。

富士通はこの技術が実用化されれば、実現される通信速度は数十Gbpsになるとしています。ストレージの読み書き速度にもよるものの、たとえば携帯端末に 内蔵すれば8K解像度で撮影した動画ファイルもあっという間に転送が完了するはず。またPCやスマートフォンのフルバックアップも瞬時に完了するようにな るかもしれません。

富士通は、2015年中にもこの小型受信機を使って数十Gbpsの転送実験を開始する予定。2020年ごろの実用化を目指すとしています。

2020年といえば東京オリンピックの開催年。その頃のスマートフォンの仕様表には「テラヘルツ帯通信」という文言が当たり前に書かれているのかもしれません。