木曜日, 7月 16, 2015

WD Cloud|Western Digital


クラウド感覚でアクセスできるLAN接続HDD『WD Cloud』発表。単体でDropboxとも接続





ハードディスクメーカー大手のウエスタンデジタルジャパンが、「パーソナルクラウドストレージ」と称するネットワーク接続HDD『WD Cloud』を日本で発表しました。バリエーションは2/3/4/6TB版の4種、発売は7月22日から。店頭予想価格は2万5800円から6万2800円です。

特徴は、難しい設定なしでインターネットを介したファイルアクセスが可能になる点。これは専用サーバー(WD Cloudサーバー)と連携動作して実現します。さらにiOSやAndroid、PCとMacで用意される専用アプリを介することで、ファイルの閲覧や操作、シェアなどの操作が手早く実行できます。パーソナルクラウドストレージとは、こうした機能に由来するジャンル名です。

WD パーソナルクラウドHDD WD Cloud

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本機が採用する、専用サーバーを介してインターネット上からのアクセスを可能にするという方式のメリットは、直接公開しない点によるセキュリティ面での有利と、設定、運用の容易さ。

とくに後者のメリットは大きく、これまでリモートアクセス環境を夢見てきた数多くのユーザーを絶望に叩き落とした「インターネット上に個人Webサーバーを立てて、NASにアクセス可能にする」という技術難度と手間を一切省き、非常にシンプルな手順で実現可能にしています。



初期設定の容易さは発表会場でも強調しており、WD Cloudサーバーにアカウントを作成し、同サーバーから送信されるメールを元にパスワードを作成するだけで使えることを紹介。まさにWebサービス感覚で使える点をアピールしました。

気になるのは、Webブラウザや専用アプリでの接続、つまりパーソナルクラウドとして接続する際の径路です。この点を発表会で尋ねたところ、「WD Cloudサーバーを経由しての接続となる。サーバーとWD Cloudとの間はピア・ツー・ピア接続となっている」との回答でした。



専用サーバーを介することで理論上の速度では不利になりますが、直接インターネットにNASを公開していないことから、セキュリティの面でもメリットがあります。さらに一般的なクラウドストレージ(いわゆるパブリッククラウド)と比べた場合には、データがコピーされない(する必要がない)という、やはりセキュリティ的なメリットがあります。こうした点から説明会でも、セキュリティの高さに関しては機会があるごとに強調されていました。



専用アプリは、基本的なファイル操作はもとより、写真や動画の自動バックアップ機能も搭載。パーソナルクラウドとしての強みを活かし、インターネットを介してのバックアップも可能な仕様です。



隠れたポイントとして、専用アプリはiOS版とAndroid版だけでなく、Windows版とMac版も用意されている点が挙げられます。とくにWindows版は、実はWinの世界では少ない「スマホアプリ的な作法で使える、総合ファイルマネージャー+ビューアー」アプリとなっている、面白い仕上がりです。



パーソナルクラウドとしてのアクセスでは、基本的なファイル操作はもちろん、ファイル共有も可能。これはアクセス権を設定する手法だけでなく、メールを介してダウンロードしてもらう手法も可能です。「リンクをメールで送信」を選択すると、WD Cloudサーバー側が設定したファイルをダウンロード可能なURLを生成して、そのURLが添付された内容のメールアプリが開く、という手順となります。いわゆるワンタイムアクセスに便利です。



動画はダウンロードだけでなく、主要なコーデックはストリーミング再生にも対応(解像度はフルHDまで)。発表会場ではドコモLTE回線を介し、米国から720p解像度の動画を再生するデモなども披露されました。

ただし質疑応答では、DTCP-IPやストリーミング時のトランスコード(ビットレートファイル形式の変換)には対応しないとのコメントもありました。このあたりはAVレコーダーやAV用途を意識した高機能NASには一歩譲る印象です。

こうした機能から、発表会では「PCだけでなく、スマートフォンやタブレット、デジタルカメラなどすべてのデータを一元管理でき、家にデータを置きつつもどこからでもアクセスできる大容量ストレージ」となる点を強調しました。



さらにNASとしての機能も、基本ファイル操作はもちろんのこと、特定フォルダ、またはローカルHDD全体のバックアップ機能にはじまり、USB接続したデジタルカメラからの自動データバックアップ機能なども搭載。OS X用のTime Machineにも対応します。

WD Cloud自身のバックアップ機能としては、特定フォルダの二重化や同一ネットワークの他ドライブへのバックアップなどを用意。さらにはパーソナルクラウドとしての機能を活かし「遠隔地に設置した複数のWD Cloud間でファイルをバックアップする」といったマニアックな機能も備えます。

そしてユニークなのがDropboxとの連携機能。本体側の設定にDropboxアカウントの項目が用意されており、ここに登録することで、PCやスマートフォンなどの他クライアントを介さずDropboxとの直接同期が可能になります。



またクライアントアプリ上では、GoogleドライブやOneDriveなどのクラウドストレージを登録し、ファイル操作が可能。これらはDropboxとは異なり基本的な操作しかできませんが、同一アプリ内でWD Cloudとのファイル操作が可能になるというメリットがあります。とくにファイル管理ソフトが限られるiOS版では地味にありがたいところでしょう。



ハードウェア面での特徴は、内蔵するHDDとして自社製の『WD Red』を採用する点。RedはNAS用に設計されたファームウェアを採用しており、コンシューマー用HDDに比べて高度な振動検知や高温環境下での信頼性を高めた位置づけの製品。各社のNASへの採用実績や人気も高いモデルです。

制御用のSoCは、詳細は未公表ですが、動作クロック800MHzのデュアルコア製品を搭載。シングルドライブのNASとしては比較的処理速度が高速な点もアピールします。



本体側の接続端子は、有線LAN(1000BASE-T)×1基とUSB 3.0×1基。このUSBは多機能で、接続した外付けストレージのパーソナルクラウド経由アクセスも可能。さらに上述したデジタルカメラの自動バックアップなど、様々な用途に使用可能です。

本体サイズは縦置き時で49×170.6×139.3mm(幅×高さ×奥行き)、重量は2TBと3TB版が0.92kg、4TB版が1kg、6TB版が1.03kg。NASとしての対応OSはWindows 8.1/8/7/Vista、Mac OS X 10.7以降です。



なおWD Cloudは、日本では初登場となりますが、米国では2013年から『My Cloud』シリーズとして発売されている、実績豊富なシリーズ。パーソナルクラウドとしても既に多数のユーザーに使われており、定評があります。いわゆる「よく枯れた」状態なので、こうした点での心配は不要でしょう。

ただ気になるのが米国版との価格差。現状では米国版で最も人気の高い4TBモデル『WDBCTL0040HWT-NESN』がAmazon.comで184.82ドルなのに対して、日本では『WDBAGX0040HWT-JESN』の予想価格が4万4800円。

型番が大きく異なることから内部部品のグレードが異なる可能性があり、またアプリなどの日本語化がしっかりなされた(コストが掛かっている)製品ではありますが、それでも単純計算では内外価格差が若干大きな印象です。

こうした価格戦略は気に掛かるところではありますが、目玉であるパーソナルクラウド機能をはじめ、機能的には間違いなく便利で強力なモデル。専用アプリの操作感なども良好なため、日本でも米国に続く定番ネットワークHDDとなりそうな気配もあります。