金曜日, 7月 10, 2015

MADOSMA、Windows Phoneは買うべきなのか

MADOSMA登場。Windows Phoneは買うべきなのか


 マウスコンピューターから話題の最新Windows Phone「MADOSMA」が登場した。他のメーカーもイベントにWindows Phoneを出展するなど、にわかに注目を集めている。
というよりも、そもそもWindows Phoneは新しいデバイスではないので、「再注目」されていると言うべきだろう。しかし、少なくとも現時点では、素人が買うべき端末ではないと確信している。Windows Phoneは、スマホの中では、あくまでも「第三の選択」である。iPhone、Androidでもない選択肢は、どう見てもメインのスマホにはなり得ない。それでも、2台目、3台目に買うデバイスとして魅力はあるのだろうか。

考えてみれば、一昔前には5万〜10万円もする電子手帳がそれなりに売れて市場を築いていた。今から考えれば、もうオモチャのようなモノだったのだ。そう考えると、MADOSMAは、3万1000円ほどで手に入るのだから手ごろだ。

僕も楽しそうなのであえて購入した。今回は、実際手にしてみると何が楽しいのか、またどんな点に困るのかを詳しくチェックしていきたい。

実は、3年以上前に初代のWindows Phoneが登場したときには、購入する寸前まで検討した。だが買わなかったのは、イニシャルのコストよりもランニングコストが気になったからだ。 MADOSMAなら、3万円ちょっとの本体を手に入れてWi-Fi環境で使うことが可能。もちろん、格安SIMを入れれば外出先で楽しむこともできるわけだ。このコストなら、趣味のデジタルツールとしても十分に手が出る。


他のスマホとは、ひと味違う「MADOSMA」は、楽しく使いたい第三の選択だ。

本体はチープながら価格を考えれば納得できる

「GALAXY S6 Edge」(サムスン電子)が良く売れているようだが、確かに素晴らしい質感で僕も欲しくなってしまった。言うまでもなく人気の「iPhone 6/6 Plus」もすごい完成度だ。

とはいえ、これらは、本体価格が10万円に迫ろうかという高級モデルなのだから、当然だ。そんな雲の上の競争はさておき、安価なスマホも日夜製品の質が向上してきている。MADOSMAも3万円ちょっとという価格を考えれば悪くないと思う。確かに手触りはチープだし、高級モデルがこぞって金属やらガラスを採用する本体はそもそも樹脂製だ。

だが、軽くてほどよいサイズは悪くない。そう思って、手元にある「Nexus 5」と並べて見たら、実はかなり負けていた。液晶がどちらも5インチであることを考えると、Nexus 5のなんとコンパクトで美しいことか。MADOSMAが上下にムダに大きいことが露呈してしまい、ちょっと恥ずかしい感じだ。

ただ、手への収まりはいいので大き過ぎるというわけでもない。価格を考慮しつつ、Nexus 5を見なかったことにすれば妥協できる。

5インチのスマホは、ある意味で究極のサイズだと思う。今後も6インチクラスのスマホが登場しそうだが、使い勝手と本体サイズのコンパクトさのバランスを考えると、5インチがひとつの完成形だろう。4.Xインチのスマホは姿を消しつつあるが、5インチは残っていくだろう。価格を考えれば、どこもかしこも妥協できてしまうMADOSMAの設計はうまい。
ちょっと気になるのが、背面に大きなWindowsのロゴが付いていること。MADOSMAのロゴとダブルネームっぽくなっているのだが、これは必要なのだろうか? ホームボタンがWindowsのマークになっているのだから、それでいいのではないかと思う。


「Nexus 5」と比べるとムダに大きなMADOSMA。

「iPhone 6 Plus」など5.5〜6インチクラスのスマホと比べると手になじみやすい。

極端な薄さなど期待してはいけない。

背面のデザインはシンプル。

背面のWindowsロゴは必要だろうか。

作りはAndroidと同じだ

スマホとしての作りは、Androidとまったく同じだと考えていいだろう。電源と音量調整ボタンに加え、microUSBポートを搭載する。操作のためのボタンは、ディスプレイの下に3つ並んでいて、戻る、ホーム、検索となる。

Androidスマートフォンを使った経験があれば、まず迷うことなく利用できるだろう。基本的には画面へのタッチとホームボタンをよく使うことになり、たまに「戻る」をタップする。タスク切り替えのボタンがない点に最初戸惑ったが、「戻る」を長押しすればOKだ。
検索ボタンをタップするとbingが開くのが、個人的にはどうにもいただけない。検索はGoogleでしたいのだ。色々と探しているのだが、メニューには検索サイトを変更する項目はないようだ。OSとしては後発なのだから、もっと懐を広くとって、検索サイトを変更させるべきだろう。

Androidは、「ホーム」「タスク切り替え」「戻る」ボタンの3つが一般的だ。Windows Phoneは、「ホーム」「戻る」「検索」となっている。そもそも検索とタスク切り替えの頻度は、確かにいい勝負だと思う。とはいえ、Androidに慣れている人には、タスク切り替えのほうが重宝しそうだ。


コネクターはmicroUSBとAndroidスマートフォンと同じ。
音量調整や電源ボタンも一般的だ。

検索ボタンを押すと、やっぱりbingが開く。Googleに変更させてほしい。

メニューは素晴らしく使いやすい

アプリの一覧がホーム画面のタイルで並んでいるのはとても使いやすく、よく使うアプリをここに並べておくことになる。アプリの利用頻度や情報を表示の有無でタイルのサイズも変更できる。Windows 8では失敗した感が強いタイルだが、スマホにはとても向いている。まあ、これがiPhoneだったらよく使うアプリが多すぎてタイルが並びすぎになるというジレンマが起こりそうだが、Windows Phoneにはそんなにアプリがないのだから、これでいい。

アプリは、画面を右から左にスワイプすると一覧形式のリストで表示される。これも五十音で探しやすい。とはいえ、僕は嫌いではないがいかにもWindowsの発想だ。この方式だとアプリの名前を覚えておく必要が出てくる。自分でフォルダーを作ったり、アプリを置く位置を工夫して、1ページ目は写真アプリ、2ページ目は仕事関係――といったカスタマイズができない。すなわち、名前を忘れてしまったアプリは探しづらくなるだろう。まあこれも、アプリが相当に増えた際の話なのだが……。


ホーム画面は使いやすい。

アプリは五十音順で並ぶ。数百本のアプリをインストールしたら、果たして見つけやすいのだろうか。

設定は分かりやすいが文字が小さ過ぎる

画面を上から下へスワイプすると通知が現れて、設定ボタンもそこにある。もうとても分かりやすい――というより、Androidと同じじゃないか。せっかくだから、全然違う作りにしてくれることを期待しているのだが、あっけないほど似ていて拍子抜けする。

ただ、ここで表示される文字が小さすぎる。設定の「簡単操作」で文字サイズを調整できるのだが、このあたりの文字は変わらないようだ。

話はそれるが、まだ、購入して10日ほどなので機能がよく分からない部分が少なくない。そこで、インターネットで検索したり、ヘルプを探してみるのだが、情報が少な過ぎて驚いてしまう。まあ、それが楽しいのだが。

例えばマイクロソフトのヘルプには、延々と「Cortana」について書かれているのだが、この機能は日本語環境では使えない。どうやら、単に日本語翻訳したヘルプのようで、読んでいるのが辛くなってくる。また、記述も古いものが散見される。内容はあくまでもWindows Phone 8で、Windows Phone 8.1と異なっているようだ。

MADOSMAが登場してユーザーがまた増えることは間違いないのだから、マイクロソフトとしてももう少し頑張ってほしいところだ。

設定も分かりやすいので困ることはない。だが逆に「Androidでできてるアレがしたい」と思うと、機能が見つからないことが少なからずある。そこで困るのは、情報が少ないために、機能が見つけられないのか、そもそも機能がないのかが判断しづらいことだ。


設定画面は文字ばかり。こういうデザインがWindows Phoneで、なかなか分かりやすい。

画面を上から下にスワイプすると通知と設定が表示される。

とはいえ、文字が小さ過ぎて読みづらいと思うのは僕だけではあるまい。

カメラは並だがアプリが少な過ぎる

カメラは800万画素で、格安スマホとほぼ同じレベルだ。普通にスナップを撮るならこれで十分だろう。ただ、最近の高級スマホと比べると残念ながら見劣りする。Androidスマートフォンは種類が多いので、カメラを重視して選択することもできる。

ところが、Windows PhoneはそもそもMADOSMAくらいしか手に入らないので、選択の余地がないのだ。

同じ800万画素でもiPhoneに比べるとかなり見劣りし、タイムラプスなど特殊な撮影もできない。また、カメラアプリの本数も少ないので、楽しめないのもいただけない。

とはいえ、気楽に使うならこれでいい。色合いも自然で普通に満足できるはずだ。スキャナーアプリは秀逸な「Office Lens」を使えばよいだろう。

少々困ったのがビデオだ。どうやら、フォーカスが合うのが遅いので、ピンぼけの動画ばかり撮れてしまう。まず、ピントが合っていることを確認してから、ビデオのボタンを押して撮影を開始するのだが、ここでいったんぼけてしまう。ビデオの撮影が始まってから一呼吸置いてピントが合うのを待ってから本体を動かすか、本体を固定したまま動画を撮ればいい。ところが、ビデオ撮影のボタンを押してすぐに本体を動かすとぼけた動画撮れる可能性がとても高いのだ。


色合いも自然で、スナップには十分使える(左と中)。ボケ具合も個人的には好みだ(右)。



スキャナーアプリは「Office Lens」が秀逸で、テキスト変換もできる。


なかなか快適にサクサク動作する

性能が気になるところだが、そもそもOSが違うので他のスマホとは比べるのは難しい。実際に使ってみた印象では十分に満足できるパフォーマンスで、てきぱきと動作する。まあ、最近はAndroidの格安スマホもサクサク動くので、一般的と言ってしまえばそれまでだが。

MADOSMAの欠点は、ストレージが8GBしかないことだろう。ヘビーに使うなら、microSDカードの増設はマストだ。とはいえ、そもそもMADOSMAで音楽を聴いたり、映画を見る人は多くないだろう。僕も音楽を聴くならiPhoneを利用する。さらに、定額性の音楽配信サービスが注目を浴びているが、そこもWindows Phoneは弱い。

バッテリーの持ちが気になるところだが、容量は2300mAhで連続通話時間が9時間となっている。こちらも、一般的な格安スマホと大差ないだろう。僕も、10日ほど使った限りではほぼ満足できた。とはいえ、メインのスマホとしては利用していないので、あくまでもライトユースの場合――という注釈付きだが。

スペックで気になるのが、液晶の解像度が1280×720ドットにとどまることだろう。ホーム画面を見たり、メニューを表示している分には特にざらつきなどは感じられない。写真も、まあきれいに表示する。ところが、高級スマホと比べると大きな差がある。これも妥協すべき点だが、要するにビジネス向けのスマホと考えるのが正解だろう。


バッテリーは2300mAhの容量で駆動時間は普通だ。

地図アプリの弱点もなんとかなる

標準の地図アプリが使い物にならないのがWindows Phoneの弱点だ。これはもう、どう考えてもいち早く改善するべきだろう。AndroidやiOSとの比較というより、スマホとしてあり得ないと思う。 しかも、日本以外の多くの地域では地図をダウンロードして使えるのだから、残念にもほどがある。

ただ、ユーザーが地図アプリをダウンロードしたり、ブラウザーで表示すれば、まあ利用は可能だ。カーナビアプリも「MapFan」があるので、どうにかなりそうだ。

僕は、「Maps+」というアプリをインストールして使っているが、場所を見る程度なら問題はない。ただ、どの地図アプリもAndroidやiPhoneのGoogleマップと比べるのは酷だ。
GoogleがWindows Phone向けにサービスを提供しない理由は僕には分からないが、提供されない以上マイクロソフトがGoogleを上回るサービスを用意するべきだと思う。仕事で使うスマホとしても、地図はマストだ。



地図は驚くほど情報量が少ない。田舎の地図のように見えるが、これは23区だ。 
日本は地図がダウンロードできるエリアには含まれていない。


Gmailなど、同じみのGoogle純正のアプリは見当たらない。

アプリの少なさよりメニューが気になる

Windows Phoneのアプリの少なさは、さんざん言われているのだが、僕も明らかに少ないと思う。そもそも、Google系のアプリが見当たらないし、検索してもヒットするアプリが極端に少ない。がっかりしたのが、アプリのカテゴリに「仕事効率化」がないこと。
「ビジネス」に統合されているのだ。こちらも、アプリが少ないと言われている、Windows 8のStoreと比べても大幅に少ない。


標準ブラウザーが気に入らない場合の選択肢も少ない。画面は、「Opera mini」だ。


ゲームも米国っぽいものが主流で、パズドラやモンストなどはない。iPhoneやAndroidを使っている知人に「面白いゲームがあるよ」と言われても、インストールできる可能性はほぼゼロだろう。

まあ、今MADOSMAを買う人は、アプリが少ないことなど百も承知だろう。そもそも、日本では1機種のWindows Phoneしか手に入らなかったわけで、これではアプリ開発者も作る気になるとは思えない。ここ最近で数モデルの登場が予定されているが、それでもiOSのアプリを作った方がはるかに利益が出そうだ。

年末に登場すると言われるWindows 10版のWindows Phone(Windows 10 Mobile)が登場したとしても、この点が解消される望みは薄そうだ。今後は、iOSやAndroidのアプリを移植しやすくする取り組みがどこまで機能するのかが興味深いところだ。


おすすめゲームの一覧もちょっとアメリカンだ。

アプリは五十音順で並ぶリストで管理する。数が増えてくると厳しい。

MLBの情報よりプロ野球が見たいのだが、このあたりもどうにかしてほしい。

Officeにはガッカリした

マイクロソフト製のWindows Phoneなのだから、いくらアプリがないといってもOfficeはバリバリ使えるだろうと、まあ誰もがそう考えるだろう。

OneDriveとの連携は問題なく、パソコンから保存したOfficeのファイルもほぼ開ける。簡易的な編集にも対応するのだが、ここで思わず手が止まる。なんと、iOSのOfficeに比べても機能で劣っているのだ。例えばPowerPointは、iOSではアニメーションの設定までできる。ところが、Windows Phone版では、テキストのちょっとした編集程度にしか対応していない。

これはさすがにいただけないと思う。iOS版よりもOfficeの機能が優れていないければ、Windows Phoneを手に入れる価値が見いだせない。まあ、マイクロソフトとしても、Windows Phone版のMicrosoft Officeに力を入れるより、iOS版を開発した方が、Office 365の売り上げが伸びることは想像に難くない。だが、そこは意地でもWindows Phone版に注力するべきだと思う。


Officeのファイルは例によって、OneDriveで管理できる。

PowerPointのスライドは一覧で表示可能。

表示は美しいが、ちょっとした文字編集程度しかできない。

マニアならこの不便さも楽しめる?

いま、Windows Phoneを買うのは、完全に趣味の世界である。それでも、MADOSMAはすぐさま売り切れるほどの人気になった。なんとモノ好きの多いことか、その中の1人である僕も驚いてしまった。

MADOSMAは実用性の高いスマホだと思って買うのはやめた方がいい。これはもう、いじって遊ぶオモチャである。少ないアプリを工夫して使うことに喜びを感じられる人にはおすすめできそうだ。また、人が持っていないスマホを使いたいなら、それもいいだろう。

ただ、“お楽しみ”以外で積極的な購入理由を見つけるのは無理なので、どう考えても、3台目だろう。基本的には、スマホを買うなら、AndroidかiPhoneをおすすめする。2台目の購入もそのどちらかにするべきだ。冒頭でも書いたが、2台買ってもまだ物足りないテッキーな人の「第三の選択」には悪くはないだろう。ライバルになりそうなBlackBerryも撤退しているし、敵はFirefoxスマホくらいしか見当たらない。

ハードウエアのコストパフォーマンスはそう悪くないと思うし、今買っておけば年末にアップデートがされるか否かを、ドキドキと楽しめるだろう。マウスコンピューターならアップデートしてくれるに違いないと、期待しつつ。