水曜日, 7月 01, 2015

Fairy Lights in Femtoseconds


触れる空中ディスプレイFairy Lights in Femtoseconds発表、レーザーで空気をプラズマ化






筑波大 落合陽一 助教率いる研究チームが、空中に触れる光のパターンを描く Fairy Lights in Femtoseconds を発表しました。レーザーで空気分子をプラズマ化することで、空中に光で三次元の像を描く仕組みです。

発振時間のごく短いフェムト秒レーザーを用い制御することにより、指で遮っても皮膚にほぼダメージを与えない一方、プラズマによるわずかな衝撃で触った感覚を得られることが特徴。また光学的にアタリ判定もでき、「触れて反応する空間ディスプレイ」を実現します。

Fairy Lights in Femtoseconds

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Fairy Lights in Femtoseconds を発表したのは筑波大学助教で落合研主宰、「巷では現代の魔法使いと呼ばれる」(と自称する) 研究者にしてメディアアート作家としても知られる落合陽一氏ら。



レーザー光を空気中の一点に合焦させ、空気分子をプラズマ化することで光らせる技術そのものは目新しくはありません。たとえば産総研や慶応大学ではすでに10年ほど前、空気のプラズマ化による光点を三次元的に並べて3D図形を表示する「空間立体描画」ディスプレー装置の試作品を公開しています。

今回の Fairy Lights in Femtoseconds 研究の意義は、フェムト秒レーザーを用いることにより解像度を高め、ホログラム式または三次元走査式の精緻な三次元像を描いたこと、ナノ秒レーザーなどを用いた方法よりも比較的安全性が高いことを(皮膚に見立てた革を実際に炙って)検証したこと。また触れた感覚を得られ、インタラクティブに変化させるアプリケーションの可能性を探ったことなど。

(クリスマスのイルミネーションなどに使うケーブル状や網状に連なったライトを「フェアリーライト」と呼んだりします。)





将来的に考えられるアプリケーションの例。現実の物体の上に浮いて表示する空中AR表示、触れる空中ユーザーインターフェース、触れる三次元映像など。



投影するスクリーンに依存せず「何もない」(空気しかない)空間に本物の立体像を表示でき、さらに一定の触感まで得られるとなれば、まさに夢のディスプレイ方式です。しかし今回の実験の段階では、上図のような大掛かりな光学機器を並べたうえで約1cm角の表示を実現しています。



実用化に向けた課題は光ドットの密度(解像度)を保ちつつ投影サイズを大きくすること。ここは現状の方式である限りレーザーの出力とレンズに依存するため、表示システム自体を何セットか並べる方式も提案されています。

また指で触れても従来のプラズマ発光空間ディスプレイよりも安全である点が今回の意義のひとつですが、低出力とはいえ直接レーザーが眼に入れば網膜が傷つくため、アプリケーション側でも安全策を取る必要があります。(指で触れても害がほぼないのは、長い時間炙り続けないとやけどのようなダメージはなく、それよりもはるかに前に制御して止められることから)。


空間に三次元映像が浮かぶインターフェースの実用は、もうしばらくは HoloLens のように眼を騙す系のヘッドマウントディスプレイやスマートグラスに分があるようですが、将来的な空間立体ディスプレイの実用化に夢を持たせてくれる研究です。

元論文はこちら
Fairy Lights in Femtoseconds: Aerial and Volumetric Graphics Rendered by Focused Femtosecond Laser Combined with Computational Holographic Fields (Yoichi Ochiai, Kota Kumagai, Takayuki Hoshi, Jun Rekimoto, Satoshi Hasegawa, Yoshio Hayasaki)