水曜日, 2月 04, 2015

資料作成の上手い人が持つ秘密の5ステップ


資料作成の上手い人が持つ秘密の5ステップ


 ビジネスで資料を作る場面は無数にあります。たとえば、会議の進行を円滑にするための資料、現状を報告するための資料、企画を通すための資料などです。つまり、資料作成はビジネスパーソンにとって避けられないスキルなのです。しかし資料作りで失敗するケースも少なくない。たとえば、意味の分からない資料、意味は分かるけど腑に落ちない資料、腑に落ち納得できるけど行動に移せない資料。このような資料はすべて失敗です。資料は「人を動かす」ことで初めて価値を持ちます。このような失敗を避ける資料作成術「失敗しない資料作成の5ステップ」を解説していきたいと思います。

資料は“人を動かして”はじめて意味を成す

資料の3つのレベル図表1:資料の3つのレベル
 資料には3つのレベルがあります。最初が「分かる資料」、次が「納得できる資料」、目指したいのは「動かす資料」です。「分かる」とは頭で理解した状態。「納得する」とは腑に落ちた状態。「動かす」とはアクション(意思決定や具体的な行動など)に導ける状態。つまり、資料作成の目的は「人を動かす」ことなのです。
 私は資料作成でずいぶんと苦労しました。そもそも私は文章を書くのが苦手です。小学生時代から国語の成績は悪く、仕事の報告書を昔習った起承転結で書き「小学生の作文みたいだ」と怒られました。人を動かすにはほど遠い資料でした。
失敗しない資料作成の5ステップ図表2:失敗しない資料作成の5ステップ
 私は「資料作成の上手い人には何か秘密があるのではないか?」と思いその資料を写経するようになりました。疑問があればすぐに質問をする。
 ある日、私はあることに気が付きました。それは、パソコンで資料を作成する「前」が非常に重要だ、ということです。そのことに気がついてから劇的にスキルが向上しました。それをまとめたのが「失敗しない資料作成の5ステップ」です。
 では、次のページから5つのステップを簡単に見ていきます。

資料作成の上手い人が持つという秘密の5ステップ①

ステップ1:準備する

資料のベクトル図表3:資料のベクトル
「位置づけ」「期待値」「方向性」
 このステップでは、資料を作る前に押さえておくべき3つのポイントを明確にします。
  • 位置付け(shape&positioning)
  • 期待値(who&value)
  • 方向性(before&after)
 先ずは、資料の置かれている状況(位置付け)をハッキリさせます。たとえば、会議資料であれば「進行をサポートするサブとなる資料」なのか「討議を盛り上げるメインとなる資料」なのか、企画資料であれば「構想の合意を得るための資料」なのか「最後の承認を得るための資料」なのか、などです。
 位置付けがハッキリしたら、「誰の期待にどの程度応える資料なのか?」を考えます。たとえば、会議の進行をサポートするサブ資料であれば「課のメンバー向け」に数枚の資料を準備し「横道にそれない」ようにする、企画承認のための資料であれば「役員向け」にポイントを絞ったエグゼクティブサマリーを作り「承認を得られる」ようにする、などです。
 そして、資料の方向性を考えます。資料を見た前後で「どのような変化を期待するのか?」です。たとえば、会議資料であれば議題にあがった「問題の解決案が出ている状態」、企画承認の資料であれば「承認が得られている状態」、などです。

資料作成の上手い人が持つという秘密の5ステップ②

ステップ2:設計する

骨子と各章の論理展開図表4:骨子と各章の論理展開
 このステップで資料の大まかな流れを作ります。
  • スケルトン(骨子)を作る(章立て)
  • 論理展開を考える(IREPの組み立て)
  • 自分の体験や思いを組み込む箇所を考える
 スケルトンは資料の大きな構成(章立て)です。私はいつも3つの要素をベースに章立てを考えています。
  • オープニング部 → 準備段階で用意したもの(位置付けなど)など
  • ボディ部 → 本題
  • エンディング部 → オープニングとボディのサマリー、ネクストステップなど
 各章の中の流れはIREPで組み立てます。
  • I(Issue) → 論点(議題、視点、評価軸など)
  • R(Reason) → 理由(論拠、裏付、証明など)
  • E(Example) → 例示(事例、見通し、体験など)
  • P(Point) → 主張(結論、示唆、提言など)
 ちなみに「I→R→E→P」の順番にこだわる必要はありません。「E→P→I→R」や「P→R→P」などのように自由に組み立てます。たとえば、会議資料であれば「オープニング部でI(議題)とR(なぜその議題なのか?)、ボディ部でI(議題の検討ポイント)とP(どの程度議論すべきかのゴールイメージを示唆)、エンディングはI(次回の議題)とR(なぜその議題なのか?)」でよいでしょう。
 資料のどこかにあなた自身の「体験」や「思い」を組み込んでおくと、資料に温かみとリアリティが出てきます。一個人の主観的な意見や体験にすぎませんが、客観的な事実と論理展開がならぶ「冷たい資料」の中でひときわ輝き、受け手の感情を動かすことができるでしょう。

資料作成の上手い人が持つという秘密の5ステップ③

ステップ3:手で書く

ドラフトは3ステップで手書きする図表5:ドラフトは3ステップで手書きする
 パソコンを使う資料作成をする前に、このステップで手書きのドラフト(下書き)を作ります。
  • 各ページ(スライド)の3つの要素(タイトル・メッセージライン・パーツ)
  • 3ステップで徐々に作る(タイトルレベル→視点レベル→配置レベル)
  • 3つの流れを意識する(全体の流れ・ページ間の繋がり・ページ内の繋がり)
各ページ(スライド)の3つの要素図表6:各ページ(スライド)の3つの要素
 いきなり3つの要素「タイトル」「メッセージライン」「パーツ」を書いてはいけません。最初は、タイトルだけ書いた資料を作ります。次に、視点レベルのメッセージラインとパーツ(例:「売上の推移がわかるグラフ」「決定事項と未決事項」など)。最後に、パーツの配置(例:「決定事項は左に配置、未決事項は右に配置」など)を作ります。
 このように徐々に作っていきます。そのとき常に流れを意識してください。全体の流れは通っているのか?前後のページの繋がりは不自然になっていないか?ページの中でタイトル・メッセージライン・パーツの繋がりに問題はないか?などです。

資料作成の上手い人が持つという秘密の5ステップ④

ステップ4:作り込む

資料は徐々に作りこむのがコツ図表7:資料は徐々に作りこむのがコツ
 このステップではパソコンを使い資料化をしていきます。ステップ3で作ったドラフト(下書き)を、ただ書き写せばよいというわけではありません。
  • 先ずは、ステップ3で作成したドラフト(下書き)をパワーポイントなどにそのまま写す
  • 3ステップで徐々に作り込む(概要レベル→詳細レベル→完成レベル)
  • 体裁ルール(フォントやカラー、配置など)や用語集(言葉の統一のため)を作る
 作り込むときに「いきなり100%を目指さない」ようにします。全体の流れ・ページ間の繋がり・ページ内の繋がりを意識し徐々に作り込んでいきます。先ずは、ステップ3で作成した下書きをパワーポイントなどにそのまま写す。これが概要レベルになります。次に、メッセージラインに「メッセージ」を記載し、作るパーツを「具体化」する。最後に、パーツを作り込み全体的に整えていきます。
 企画提案書のようなガッツリつくる資料の場合には、各段階で関係者を集めたレビューをすると良いでしょう。そして体裁と用語を統一するために、忘れずに体裁ルール集と用語集も作ります。

資料作成の上手い人が持つという秘密の5ステップ⑤

ステップ5:仕上げる

資料のシンプルさの塩梅図表8:資料のシンプルさの塩梅
 このステップは最後の仕上げです。魂は細部に宿ると言います。このステップを入れるか入れないかで資料の質が変わります。
 次の3つを実施します。
  • よりシンプルに
  • 体裁や流れを確認する
  • 相手に合わせる
 全体の流れ・ページ間の繋がり・ページ内の繋がりを意識しながら、削れるところは削りまくります。たとえば、文書を短くする、不必要なパーツを省く、ページごと削除するなどです。よりシンプルにしましょう。そのとき体裁もチェックし適時修整します。
 相手に合わせるとは「相手の普段使っている表現や体裁に合わせる」ということです。たとえば、色使い(例:コーポレートカラーなど)や言葉の使い方(例:である調、ですます調など)などです。

資料作成を成功に導くボトルネックファインディング


  • Step 1. 準備する → 資料のベクトル(資料作成目的など)を明確にする
  • Step 2. 設計する → 資料のストーリー(骨子や展開など)を設計する
  • Step 3. 手で書く → 資料のドラフト(下書き)を手書きで作る
  • Step 4. 作り込む → パソコンなどで資料を作り込む
  • Step 5. 仕上げる → 最後に資料を整え仕上げる
いかがだったでしょうか?